

祭りの熱気とテレビ収録の緊張感は、どちらも同じ生地から始まります。ここで集めた記録は、食の愛好家や九州を旅する人、そして日本のパン文化に惹かれる読者に向けたものです。プロの製パン技術者向けの手引きでも、商業マーケティングの教本でもありません。あくまで現場に立った者の覚え書きとして読んでいただければと思います。 祭りとTV出演の日程がぶつかったとき、地域文化の真正性をどう守るか——この調整こそが最も神経を使う部分でした。イベントがすべて公開されているわけではなく、テレビ特集が糸島のメロンパン文化の全貌を映すわけでもありません。放送で流れたのは一日の出来事ですが、その一日を支える仕込みは、前夜から数えて生地を三度寝かせる工程の上に成り立っていました。